果菜類の採種方法
今回は実際の採種方法について、果菜類の中でもトマト・ナス、ウリ科、マメ科に焦点を当てて説明していく。
トマトの採種
・交雑性と母本選抜
トマトは自殖性の植物であるため、他の品種と交雑する危険性は少なく開花時にこれといった作業は必要ない。また近交弱勢も起きにくく一つの実から大量の種子が採れるため、母本は最低1~2本あれば十分である。母本は勢いが良く健康な株から選ぶ。
・採種
採種用の実を決めたら、完熟して種子が充実するまで食用の実とは区別して成らせておく。実が完熟したら種と周りのゼリー状の部分をまとめて容器に取り出し、常温で1~3日放置して発酵させる。発酵が進むとゼリーと種子が分離してくるので、水で洗い流して余分なゼリーを取り除き、種子を乾燥させる。取り出した種子は封筒などに入れ、冷暗所で保存する。
ナスの採種
・交雑性と母本選抜
ナスもトマト同様、自殖性植物で交雑のリスクは少ないが、まれに交雑する場合があるため寒冷紗を掛けて虫の侵入を防ぐとよい。複数品種を作る場合は、品種の間隔を2m程度あける。
・採種
ナスは通常未熟果の状態で収穫するが、採種用の実は黄色くなって表面が軽くしなびるまで完熟させたのち、切り取って皮が茶色くなるまで追熟させる。おおよその目安は開花後60日である。またこの時、果肉がほぐれやすくなるように軽く揉んでおくとよい。追熟させた実は水に浸して果肉をほぐし、ザルなどで種子のみを取り出すか、トマト同様に数日発酵させて果肉を取り除く。採取後の保存はトマトに準ずる。
ナスの採種果が未熟であった場合は発芽率が著しく低下するため、いかに腐らせずに完熟させるかが一番のカギとなる。
ウリ科野菜の採種
・交雑性と母本選抜
ウリ科は雌雄異花であるため、交雑を防ぐために袋掛けと人工授粉が必要となる。カボチャやスイカ、メロンなどでは通常完熟果を利用するため、種を採った後の実も食べられる。
・採種
ウリ科野菜の蕾は開花の前日になると黄色く色づき膨らむので、そうした蕾には雄花・雌花問わず袋を掛ける。一般に雌花の蕾には根元に丸い子房が付いているため判別できる。また、南瓜に関しては雄花の根元に長い柄がついているためこれも見分ける一つの方法である。翌朝、なるべく早いうちに雄花の花びらを取って雌花の柱頭に花粉をつける。受粉は早い時間帯ほど成功率が上がるため、できるだけ早朝が良い。また、雨の日は受粉率が下がるので、念のため必要量以上の実をつけておく。人工授粉が終わったら蜂などの飛来を防ぐため、雌花には再び袋を掛けておく。(参考・南瓜の人工授粉)
受粉後数日して子房が肥大を始めたら、袋は外してよい。カボチャではへたがコルク状になったら、スイカの場合は開花後の日数が一定の値に達したら(品種によって異なるため要確認)、キュウリの場合は十分肥大して黄色く変色したら採種が可能となる。種子は水でよく洗い、乾燥させてから保存する。カボチャでは種子の周りに発芽抑制物質が付いている場合があるので、念入りに洗う。
マメ科野菜の採種
・交雑性と母本選抜
マメ科は自殖性であり、雄しべや雌しべが花弁の内側にあるため交雑の心配は少ない。ただしソラマメに関しては異品種間で交雑の可能性があるので、寒冷紗で蜂などの侵入を防ぐ。ウィルスに感染した株からは採種を控えること。
・採種
莢が黒~褐色に熟したら収穫する。エンドウやインゲン、ソラマメ、ササゲ、フジマメ等は畑で乾燥させてから収穫し、莢から豆を取り出してごみや不良種子を取り除いて紙袋に入れ冷暗所で保存する。枝豆・大豆や小豆は収穫後、莢ごと乾燥させる。乾燥が進むと莢がはじけて豆が飛ぶので、時期を逃さないようにする。乾燥後の作業は他の豆類に準ずる。
豆が肥大しているときにカメムシ等の吸汁に遭うと、それ以上豆が肥大しなくなる。カメムシの害が多い場合は予めトンネルで覆うなどの対策が必要となる。
参考文献
野菜の種はこうして採ろう 船越健明 2008年 創森社
やさい畑 秋号 2008年 家の光協会